終わりの方でずっと止まっていた宮部みゆきさんの『悲嘆の門』をやっと読み終わったので、感想などを書きたいと思います。
あらすじは、
インターネット上に溢れる情報の中で、法律に接触ふるものや犯罪に結びつくものを監視し、調査するサイバー・パトロール会社「クマー」。大学一年生の三島孝太郎は、先輩の真岐に誘われ、五ヶ月前からアルバイトを始めたが、ある日、全国で起きる不可解な殺 人事件の監視チームに入るように命じられる。その矢先、同僚の大学生が行方不明になり……。〈言葉〉と〈物語〉の根源を問う、圧倒的大作長編。
出典元:新潮社
ここからはネタバレを含みながら好き勝手書いて行こうと思いますので、これから読むよ、という方は戻られた方がいいかもしれません。
物語の冒頭では、被害者の身体の一部を切り取るという連続殺人事件が起き、いつもの宮部みゆきさんの上質なミステリーが読めるのかな、とワクワクが止まらなくなります。
更に、主人公の身近で起こるホームレス失踪事件と、それに合わせたように姿を消した同僚、夜になると動き出すと噂される廃ビルの屋上のガーゴイル像を、定年退職した元刑事が調査するというオカルト要素など、様々な謎が絡み合う中、主人公がサイバー・パトロールの会社でアルバイトしているという事でネットが絡んだ現代風の事件を予感させ、期待度はもう120%に!!!
しかし、その期待は裏切られます。
廃ビルのガーゴイル像、トリックなどではなく、本当に動きます。
その正体は、怪物(のようなもの)。
完全に、ファンタジーです。
さらに、中二病の美少女や、完全にファンタジー物語に出てくる戦士のようなおっさんも登場します。
ずっと正統派ミステリーだと信じ切って(少し疑わしい雰囲気は漂っていましたが)読んでいたら、まさかのファンタジー。
その衝撃は凄まじいものでした。
ちょうど、主人公の三島孝太郎がガーゴイルの正体を目の当たりにした時と同じような衝撃を読者の我々も味わっているような感覚になります。
孝太郎が怪物の存在など夢にも思わなかったのと同じように、私もこの『悲嘆の門』がミステリーであってファンタジーとは思ってもいなかったから。
あるいは、孝太郎が受けた衝撃を、我々読者にも疑似体験させようと計算されて書かれたのかもしれませんね。
この読ませ方が、やはり天才的。
さすが私の文学の神、宮部みゆきさん。
宮部みゆきさんになりたい。
私は、好きな作家さんは沢山いるのですが(というか、ほとんどの作家さんをリスペクトしている)、私の中での文学の神は宮部みゆきさん、村上春樹さん、司馬遼太郎さんの三闘神だと定めています。
しかし、この『悲嘆の門』、いつもの宮部みゆきさんと何か違う気がしました。
けっこう、過激で残酷な描写が多い。
孝太郎の妹のような存在の美香が殺されたシーンなんて、とてもショッキングでした。
でも、宮部みゆきさんならどうにか生き返らせてくれると思っていましたが。
そして、いつもの爽快感がない。
孝太郎は、事件を追うにつれて、だんだんと闇に染まっていきます。
スター・ウォーズでいうとダークサイドです。
最後の方などは、美香が殺された事に孝太郎がブチ切れ、美香が殺される事件の発端となった女の子の首を噛みちぎってしまい、その後、全てに絶望して世界を捨てます。
まるで、エヴァンゲリオンのシンジ君みたいに。
そして、物語の終わりも切なげ。
ひとり冷たい風を受けながら丘の上に立って、眼下に見える廃墟となった街を眺めているような、少し寂しい感じがしました。
宮部みゆきさん、少し心が疲れてるのではないかと心配になります😭
でも、メジャー・デビューして安定に走るミュージシャンと違い、大御所になっても過激な作品を生み出し続ける宮部みゆきさんはやっぱりかっこいい。
尊敬します!
物語中に『言葉の哲学』のような要素が入っているのですが、これは宮部みゆきさんが持っている言葉に対する想いなのでしょうか。
とくに私が印象に残ったのが、『言葉は蓄積する』というところ。
私たちのこのリアル世界でも、ネットの掲示板やSNSで汚い言葉をよく見かけます。
その言葉を発した人は、ネット上に吐き出してストレス解消しているつもりかもしれないけど、その発した言葉は確実に発した人自身の中に蓄積していく。
そしてどんどん自分の心を汚している。
私は『自分が発した言葉は自分に返ってくる』と教えられましたが、それと同じような意味かもしれません。
言葉って不思議なもので、普段何気なく使ってるけどものすごく力がある。
言葉に関して語り出すと長くなるので、また別の記事で書こうと思います。
しかし、宮部みゆきさんの言葉に対する考え方はとても興味がありますね。
そして、『悲嘆の門』の感想も長くなってきちゃったので、ここらへんで終了したいと思います(笑)
もうちょっと書きたい事あるんだけど、上手くまとまらない😂
最後の方の異世界編はもっとじっくり読みたいとも思いました。
なんか、異世界編だけが微妙な感じがしたんですよね🤔
私は宮部みゆきさんの本格ミステリー『火車』も好きだし、完全なファンタジー作品『ブレイブ・ストーリー』も好きですが、この『悲嘆の門』はその中間にあたる作品なのかな、と思いました。
この『悲嘆の門』は、『火車』のような本格ミステリーを想像して読まれると火傷する作品です(笑)
読み終わった勢いでだらだらと書いてしまいましたが、
また違った別角度の『宮部みゆきさんの世界』を感じられる作品だと思いました。
小説書きたくなってくる!!!
そういえば、下巻の表紙、さりげなくネタバレしていますね。
私のバイブルです☺️⬇️
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